浮気の定理-Answer-
桃子は自分が俺を傷付けたんだと思っているんだろう。


それなのに、自分から夫のベッドに潜り込み、何度も何度も誘っていたことを恥じるような素振りを見せた。


青白い顔で、少し痩せたかもしれない。


消え入るような声で、ごめんなさいと小さく漏らすと、それ以降、桃子が俺のベッドに入ってくることは一度もなかった。


俺の顔色を窺いながら、遠慮がちに接するようになった桃子。


そんな桃子がだんだん疎ましくなって、俺の帰りはどんどん遅くなっていった。


それでも今までは日付が変わるまでに帰るように気を付けていた。


せっかく桃子に既成事実を作っても、俺の不倫がこんなに早くばれてしまえば、もともこもない。


そう思っていたから……


けれど半年が過ぎた頃、紗英との逢瀬に夢中になり、家に帰るのが初めて日付を跨いだときのことだ。


てっきり寝ていると思っていた桃子が、リビングで起きて俺の帰りを待っていた。


「お帰りなさい、遅かったのね?」


そう言って力なく笑った桃子が、俺を責めてるように感じてイラついた。


同時に紗英の匂いや痕跡が残っていないか不安になる。
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