浮気の定理-Answer-

桃子に離婚を切り出したのは、ほんの数時間前――


今日は店が定休日だったから、桃子の帰宅を待ってそれを伝えた。


久しぶりにきちんと見た桃子の顔は、ひどくやつれていて、体も以前に比べて痩せてしまっている。


ここ何ヵ月も彼女を避け続け、寝食も共にしていなかった俺は、そのことに今日初めて気付いた。


きっと、桃子のことだから、ずっと自分を責め続けたのかもしれない。


加えて、水落からの脅しも続いてるはずだから、心労がたたるのも当たり前だ。


あの男もうまくやってくれたようだな……と俺は内心でほくそ笑む。


それを顔に出さないように離婚を口にする俺は、自分でも驚くほど桃子に対して冷酷だった。


桃子は俺の言葉に理由を問うことなく、わかった……と一言だけ口にすると、顔を歪めながら力なく俯く。


ここまで追い詰めるにはかなりの時間を費やした。


ようやくここまで来たのだ。


まだ早いかなとも思ったけれど、桃子の憔悴ぶりはひどいもので、逆にこれ以上引き延ばせば、めんどくさい事態に陥った可能性もある。


倒れられて入院なんてことになれば、離婚も先伸ばしになっていたかもしれない。

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