浮気の定理-Answer-

閉店後のホールで、俺は一人あの女を待っていた。


紗英には一人で帰ってもらうことにして、二人きりで話した方がいいような気がしたからだ。


妊娠中の体なのに、紗英にあの女の愚痴など聞かせたくない。




「どういう知り合いなの?」




すがるように聞いてくる紗英は、どうやら違う心配をしていたらしい。


他にも女がいるんじゃないかと疑ったようだった。




「そんなわけないだろ?俺には紗英だけだよ」




そう言ってキスを落としたけれど、不安そうな顔は拭えないままだった。


仕方なく俺はあの女について説明をすることになる。


確かに吉岡真由は可愛らしい雰囲気を持っていて、背丈も紗英と変わらない。


桃子よりもはるかに幼い印象の彼女に、驚異を感じるのは仕方ないのかもしれなかった。




「実は妻の友達なんだ

たぶん、離婚することを聞いて文句を言いに来たんだと思う」



「えっ!奥さんの友達?」



「あぁ……でも大丈夫

紗英と一緒になるためなら、このくらいなんてことないよ」




ポンポンと頭を叩いてにっこり笑えば、紗英は申し訳なさそうな顔で俺を見上げた。

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