浮気の定理-Answer-
俺はだんだん周りが見えなくなっていった。


あんなに家庭を壊したくないと思っていたはずなのに、真由を失うことの方が恐ろしくなってしまっている。


妻の心配する声も、責めるような言葉も、何も耳に入らない。


安らぎだった家は苦痛に変わり、俺は真由を求めてあのbarで、ただ彼女を待つことが多くなった。


待ってるからと、何通目かのメールを送り、強い酒をちびちびと飲む俺は、端から見たらどんな風に見えるんだろう?



真由はなぜ会ってくれない?

好きな男でも出来たんだろうか?

それとも、家庭ばかりを優先する俺に、愛想をつかしたんだろうか?



確かに、ずるかったのかもしれない。


一度だけ思い出に抱いて欲しいと言った真由を、ずっと縛り付けたのは俺だ。


思い出に変えて、俺のことは諦めて前に進もうとしていたかもしれない彼女を、俺は自分の都合で引き止めた。


家庭という最終的に帰る場所は確保しておきながら、真由をも手元に置きたいなんて虫がよすぎたのかもしれない。


両方、いいとこ取りをしようとしてる俺に、呆れたんだとしたら?


俺は彼女に寂しい思いをさせてたのかもしれない。
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