浮気の定理-Answer-
「ごめんなさい……

そうだよね?離婚するってことはいろいろ大変なんだよね?

全部店長に任せてばっかりだったのに、疑ったりしてごめんなさい……」




シュンと俯く彼女は、やっぱり可愛くて守ってやりたくなる。




「いや、いいんだよ

俺が紗英と一緒になりたかったんだから」




もう一度、今度は味わうように唇を重ねた。


チュッと音をたてて唇を離すと、紗英の名残惜しそうな顔が目に入った。




「ハハッ、続きは帰ってからな?

気をつけて帰れよ?」



「もぉ、店長の意地悪!」




こんな他愛ないやりとりが幸せだった。


子供が生まれて3人になればもっともっと幸せになるんだと思ってた。


新居も店の近くのマンションに、いい物件がいくつかあって検討中だったし、家具や電化製品も何度か下見に行ったりもしていた。


あともう少し……


あともう少しで、叶うはずだった。


安らぎのある穏やかな家庭。


優しい妻や可愛い子供たちと暮らす毎日。


そんな俺の理想がもう少しで実現するはずだったのに……
< 170 / 350 >

この作品をシェア

pagetop