浮気の定理-Answer-
左手で頬杖をついていた彼女が、ゆっくりとそれを崩した。




「慰謝料、払ってもらうわよ?」




――な、に言ってんだ?こいつ!




「そ、それはお前には関係ないだろ?

桃子ときちんと話し合って決めたことだ

それに……桃子だって納得してることだろ?」




強い口調でそう言ったけど、彼女は動じることなく呆れたように呟く。




「納得……ねぇ?」




この女、まさか何か知ってるのか?


だけど水落にはきちんと金を払ってある。


漏れるはずはない。


そう思ってはいても、言いようのない不安が、俺を支配していく。




「彼女、妊娠してたけど……」



「え?」




急に話が逸れて頭がついていかない。




「結婚するつもりなんでしょ?」




「あ……あぁ」




「桃子は知ってるの?彼女が妊娠してること」




それがなんなんだ。


確かに桃子には話していない。


だけどそんなことは問題じゃないだろう?




「その顔は言ってないって感じね?」




「……」




「まぁ、そんなことはどうでもいいんだけど」



< 173 / 350 >

この作品をシェア

pagetop