浮気の定理-Answer-
――どうでもいいなら、聞くんじゃねぇ!


そう言いそうになって、直前で堪えた。


どうも、この女のペースにはまってるような気がする。


落ち着け、冷静に対応して、早々に帰ってもらうようにしなければ……




「と、とにかく、俺が別の女性と暮らすことは桃子にも伝えてあるし、慰謝料の話ももうかたがついてるんだ

君が文句を言いたい気持ちもわからないではないけど、これは俺と桃子の問題だろ?

口を挟まないでくれるかな?」




なるべく優しく丁寧な口調を心がけ、俺は必死に口角を上げ、笑顔を作った。


それにつられたように、表面だけの笑顔を浮かべた吉岡真由は、その表情からは想像もつかないことを言ってのける。




「それが、そうはいかないんですよねぇ

桃子があなたから聞いた話はほんの一部だし、おまけに隠してることもたくさんある

それなのに一方的に離婚を告げられて、慰謝料はなしって、どう考えてもおかしいですよねぇ?」




笑顔を崩さないまま、そう言い切った彼女は、なんだかとても不気味だった。


隠してること?


紗英の妊娠のことだろうか?


それとも別の……何か?

< 174 / 350 >

この作品をシェア

pagetop