浮気の定理－Answer－
「それでも少なくしてあげたんだけど、もし不満ならもっと上げてもいいのよ？

桃子の負った傷はそんなもんじゃすまないんだから」




忌々しげに吐き捨てた吉岡真由を押さえるように、男がさっきから彼女を羽交い締めにしてる。


その様子からも吉岡真由が、見た目よりもはるかに怒っているんだとわかった。


けれど200万は大金だ。


その金を払ってしまえば、俺の貯えなど微々たるものなのに。


紗英と住むために下見した家も諦めなきゃならない。


新しい家具や電化製品も見送ることになるだろう。


これから子供だって生まれてくるというのに、路頭に迷うことになるわけにはいかなかった。




「そんなに持ってないんだ

100万なら払うから、それで勘弁してくれないか？」




本音を言えば、100万だって痛い。


でもせめて100万あれば、少しは生活の足しになるんじゃないかと思った。


桃子は女にしては稼ぎもあるし、俺が慰謝料を払わなくたって、生活に困ることはないだろうに……




「わかった」




しつこく食い下がったかいがあったと俺はすがるような目で彼女を見た。

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