浮気の定理-Answer-
清水の場合①
白濁色の液体が、ゴムの中いっぱいに注がれる。
仕事で疲れていても、妻を抱くことだけは忘れずにしている日課だった。
以前より夜勤も増え、家族と過ごす時間が減ったこともあり、ありさをきちんと女としてみているというアピールでもある。
肩で息をしながら薄く紅色に染まる首筋が堪らなく色っぽくて、俺に応えてくれてる証拠なんだと、いつものように満足して布団に横たわった。
それでいいと思ってた。
ちゃんと夫婦のつとめを果たしているいい夫なんだと、あの頃の俺は勘違いしてたんだ。
仕事での愚痴はなるべく言いたくなくて、ストレス発散に始めたのはスマホの無料ゲームサイト。
はまりすぎだと言われれば、否定は出来ない。
けれど、ゲームをやってる間だけは無心になれた。
ありさがシャワーを浴びに起き上がっても、俺は寝転がりながらスマホでゲームを始めていた。
そのとき、ありさが俺に不満を抱えてたなんて、知りもしないで……
何か声をかけられても、生返事だったかもしれない。