浮気の定理-Answer-
会話なんかなくたって、妻をきちんと求めているのだから、不安にさせてるなんて思ってもみなくて……


俺はありさを失いかけた。




最初に違和感を覚えたのは、確かスカートをはいているのを見たときだった。


いつもはジーンズにTシャツで動きやすい格好が多いのに、ブラウスにスカート、しかもうっすらと化粧までしている。


たまたま早く帰ったときに見た、妻の慌てたような姿。



「職場の人たちとランチだったの

ごめんね?すぐに夕飯の支度するから」



早口でそう言いながら、素早くいつもの格好に着替えてキッチンに立つありさの後ろ姿を、俺はずっと目で追ってしまう。


職場の人たち?


女性なんだろうか?それとも男性もいたりするのか?


今まで感じたことのない胸騒ぎを覚えて、急に心配になる。


働かせなければ良かったと後悔するも、自分の収入が下がったせいだと思うとやりきれない気持ちになった。


娘たちがテレビに集中しているのを確認してから、俺は野菜を切っているありさの背後に立った。


確認したかったのかもしれない。


ありさは俺のものなんだと……

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