浮気の定理－Answer－
リョウと名乗ったその女性には、娘が一人いるらしい。


俺も二人娘がいることを伝えると、リョウは安心したように前よりもいろいろ話してくるようになった。



『いいパパなんですね？』



そんな風に言われると、なんだかこそばゆくて、それでもそのイメージを壊したくなくて、いいパパぶりを披露する。


娘たちを公園に連れていった話や一緒にお風呂に入るなんてことも、顔の見えない相手になら誇張して話せた。


実際は、ありさに言われてしぶしぶなんてことは内緒だ。


リョウはそれを羨ましがり、自分の夫と比べたがった。



『うちは娘には優しいけど、家のことは一切やってくれないの』



『お風呂には入れてくれるけど、一人で公園には連れてってくれないなぁ』



そんな類いのことをつらつらと書き込んでくる。


そして最後は必ずさっきの台詞で締め括るのだ。


ありさに聞かせたら、どつかれそうな『いいパパ』って台詞。


それでも気分が良かった。


人から誉められたりすることは、この歳になるとなかなかない。


ましてや家族になんて、邪魔扱いこそすれ、誉めるなんてことは滅多にないのだ。

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