浮気の定理-Answer-

barでの待ち合わせに、真由は少し遅れて現れた。


緊張した面持ちで、俺の隣に座る。


いつもの甘めのフルーツカクテルを頼んでから、ゆっくりと俺に向き直った。


「久しぶり」


微笑みながらそう言った真由の顔が、どこか寂しそうなのは気のせいだろうか?


大事な話があるからと送ったメールへの返信には、同じく私も話があると書かれていた。


真由が何を話すつもりなのかはわからないけれど、それはあまりいい内容ではない気がして、俺は話を聞く前に自分から話を切り出した。



「真由、俺……離婚するよ」


「はっ?」



喜ぶと思っていた真由の顔は意外にも違うものだった。


驚きと困惑した表情に、俺は苛立ちを感じた。



――なんだよ……その顔……もっと喜べよ……



そんな風に思う俺を無視するように、真由は慌てた様子で俺を宥めるように話す。



「ちょっと待って!落ち着いて?

なんでそういうことになるわけ?」



それでも俺は真由が嫌がってるなんて一ミリも思わずに、彼女が遠慮してくれてるんだと思った。
< 19 / 350 >

この作品をシェア

pagetop