浮気の定理-Answer-
もし、彼女が浮気をしているんだとしたら、俺にも責任があるのかもしれない。


家事や育児を任せきりで、俺は仕事だけしてれば良かった。


仕事に専念できたのはありさのおかげで、給料が下がっても文句の一つも言ったことがない。


パートに出るときでさえ、外に出てみたいと自分の都合のように言ってくれたんだ。


夫婦の時間は体を繋げることで補えてると思ってた。


だけどそれは間違いで、俺はありさの話なんか一つも聞いてやらなかった。


暇さえあればスマホでゲームをしていた俺を、ありさはどんな目で見ていたんだろう?


泣きそうになるのをこらえて、ありさの体に集中する。


萎えそうになる自身を必死に繋ぎ止めて、この思いをありさに気づかれないようにしなければと思った。




「あり……さ」




ありさの手に自分の手を絡ませ、唇を寄せた。


今、この瞬間だけは、何もかも忘れて愛し合いたかった。


浮気相手に負けたくないという思いと、ありさの心からそいつを追い出したい思いが交錯する。


俺は臭いものには蓋をしようとしていた。


それはきっと、真実を知るのが怖かったからかもしれない。

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