浮気の定理-Answer-
清水の場合④



目の前に置いてある、ありさのスマートフォン。



俺はそれを見てしまいたい衝動にかられていた。


娘たちはとっくに夢の中で、ありさは入浴の最中だ。


廊下から様子を窺うと、浴室からは水音がしてくる。


まだ、しばらく出てこないだろう。


いつだったか、俺は前にもありさのスマホを見たことがある。


綺麗になったありさに不安を感じたから……


そこにあったのは、男からのLINEだった。


特に愛を囁くような内容ではなかったけれど、男ということに衝撃を受けた。


聞いたこともない、飯島という名前は、たぶんパート先の上司なんだろう。


ありさはあまり職場での話はしない。


もちろん、その頃の俺はありさの話を聞いてやることなく、ゲームにはまっていたんだから仕方ないのかもしれないけれど……


LINEの内容から察するに、ありさと飯島という男はたまに会ってるようだった。


日付を照らし合わせて思い返せば、ありさがスカートをはいて職場の人とランチをしたと言っていた日と合致する。


こいつに会うためにお洒落をしたのかと思うと腹立たしい気持ちでいっぱいになった。

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