浮気の定理-Answer-
男はありさを清水さんと呼び、ありさは男を飯島さんと呼ぶ。


その妙に初々しい敬称をつけた呼び方が、逆に艶めかしくて俺の中で初めて嫉妬という感情が生まれた。


待ち合わせに指定されているのは、だいたいが最寄りの駅からなん駅か離れた場所で、それが秘密の逢瀬だと物語っている。


しかも休みを合わせて昼間に会ってるという事実は、俺にとってかなりの衝撃だった。


家族のために俺が働いているまさにそのとき、ありさは他の男とどこかで楽しく食事をしていたんだから……


映画の話を楽しそうに語るありさのLINEからは、男に好意を持っているのが手に取るようにわかる。


呆然とスマホを握りしめて、俺はその場に立ち尽くした。


我慢できなくて一度聞いてしまったこともある。


その時ありさは動揺することも、スマホを見た俺を責めることもせず、ただ淡々とそれを否定した。


浮気してるんじゃないのか?


男とLINEしてるだろ?


そんな俺の言葉を悲しそうに笑いながら、ありさは答える。




「職場の人とみんなでランチに行くときの連絡係なのよ

みんなに同じLINEがいってるわ」



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