浮気の定理-Answer-
「もちろんだよ

先輩にもきちんと離婚したら挨拶に行こうと思ってる」


大丈夫、俺は君のお父さんにもちゃんと言える。


真由を愛してるってことを……



「悪いけど、それは、ない」


「えっ?」



一瞬、聞き間違いかと思った。



――ないって?なにが?なんのことを言ってる?



間抜けな声を出した俺に真由は容赦なく言葉をあびせ続けた。


「だから、あたしは北川さんと結婚する気なんかないから

離婚するのは勝手だけど、あたしとも別れて?」



――わか……れる?



真由はまだ俺を信頼してないようだ。


信頼していいってことを伝えなきゃならない。


それより今まで寂しい思いをさせたことをもう一度謝った方がいいんだろうか?


俺は必死に訴えた。


悪かったと、もう寂しい思いはさせないからと……


焦る気持ちとは裏腹に、俺は笑っていたかもしれない。


大人の余裕さを、真由に見せつけたかったんだと思う。


それでも真由は首を縦には振らなかった。

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