浮気の定理-Answer-
俺には与えられなかった愛情を、自分の娘には惜しみなく注ぎたい。


他愛ない話を食事中に出来る幸せも、誰かがいなくちゃ成り立たないものだ。


花の無邪気に答える仕草や笑顔に、俺はどれほど癒されているかわからない。


いつもならその和に入るはずの涼子は、さすがに口数が少なかった。


涼子にはわかっているのだ。


花を寝かしつけたあと、何が待っているのかを……


昔から涼子はそうだった。


真性のMとでも言おうか、叱られることに怯えながら、そのあとに訪れる許しに快感を覚えてる。


そうじゃなきゃ、とっくに俺になんか嫌気をさしているはずだ。


付き合い始めたのも、涼子から告白されたのがきっかけだったし、俺を尊敬してるとまで言い切ったのだ。


失敗ばかりの新入社員に、イライラしながら叱りつけていただけの自分に、恋心を抱くなど考えられないことだった。


冗談なんじゃないかと疑った俺に、目を潤ませて愛の告白をする涼子。


従順なペットを手にいれたような喜びを、そのとき感じたのを覚えている。

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