浮気の定理-Answer-
花を寝かしつけている間に風呂に入るよう促すと、涼子はピクッと肩を揺らして怯えたように従った。


花をベッドに入れて、お気に入りの絵本を読んでやる。


ももいろのきりんという題名のその絵本は、涼子が幼い頃読んでもらったものだという。


だいぶ古くなってはいるものの、大切に保管されていたのだと手に取ればわかる。


俺からしてみれば、なにがそんなに面白いのか分からなかったが、なるほど親子だ。


花も同じようにこの本を気に入っていた。


作ったものが本物になるという大きな画用紙をもらった女の子が、ももいろの紙できりんを作って旅をする話。


女は、とかくメルヘンチックな生き物だなと呆れながらも、目をキラキラさせて待ってる花を見れば、読んでやるのも楽しいと思えた。


真ん中辺りまで読んだところで、可愛い小さな寝息が聞こえてくる。


読むのを止めて花の顔を見ると、スヤスヤと気持ち良さそうに眠っていた。


パタンと絵本を閉じて本棚にしまう。


布団をかけ直してやりながら、口に入りそうになっている髪の毛をそっと避けてやった。

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