浮気の定理－Answer－
疲れたんだな……


幼稚園のあとに涼子の実家で過ごし帰ってくるのだから仕方がない。


月に一度だから我慢しているけれど、本当ならそんなことはさせたくなかった。


親のいない場所で過ごすのが、どんなに心許ないかを俺は知ってる。


だからこそ専業主婦にさせているってことを、涼子はわかっているんだろうか？


百歩譲って俺のことはいいとしても、花のことは譲れない。


口で言ってわからないものは、体に教えるしかないだろう。


電気を消して静かにドアを閉めると、リビングへと向かった。


微かな入浴剤の香りが廊下に広がっているのを感じて、涼子がもう風呂から上がったことを知らせていた。


ドアを開くと、リビングに続くキッチンで、涼子がミネラルウォーターを口に含んでる。


俺がまだ戻らないと思っているのだろう。


無防備な後ろ姿だ。



「涼子、こっちへ来て座りなさい」



ソファーにドサッと腰掛けながら、わざと冷たく言い放った。


消え入りそうな声で小さく返事をした涼子は、ミネラルウォーターを冷蔵庫にしまい、恐る恐るこちらに歩いてくる。

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