浮気の定理-Answer-
しばらくの沈黙のあと、真由が放った言葉は驚くものだった。


「好きな人が……いるの」


嘘だと思った。


俺を納得させるための嘘だと……


そんな嘘をついてまで、俺の家庭を壊さないようにしてくれる真由を、健気に思う。


――そんな嘘つかなくてもいいんだ、大丈夫、真由が一番だよ?



「実は付き合ってるのよ、その人と――」



そのあとも何か言っていたけれど、まったく頭に入ってこない。



――付き合ってる?付き合ってるだって?俺以外の男とも寝てるってことか?



怒りに体が震えた。


真由は俺のものだ。真由だって、俺が好きだったはず。



「……私はその人を選んだの、あなたじゃない」



ようやくまた耳に入ってきた真由の声は、俺を真っ向から否定するものだった。



「嘘だろ!?嘘だよな?

真由は僕が好きだったんだ!

そう何度も言ってくれたじゃないか!」



立ち上がり真由の両肩を掴み、激しく揺さぶる。


脅えたような、蔑むような、なんともいえない目で、真由は俺を見た。



――なんでなんだ!離婚するって言ってるだろう?



俺の指が真由の肩に食い込むくらい悔しさでいっぱいだった。

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