浮気の定理-Answer-
「勇さんの働いてくれたお金です」



唇を噛み締めながら、必死にそう言葉を繋ぐ。


本当にわかっているのかどうか、その言葉とは裏腹に涼子の目に反発する色が見えた気がした。


ならばきちんと言い聞かせる必要がある。



「そうだよな?俺のおかげでお前たちは、何不自由なく暮らせるんだよな?

なのになんでお前は、俺が仕事から帰ってきた時にいないんだ

明かりのついてない暗い部屋に帰るのが嫌いだってこと、知ってるだろ?

なにも友達に会っちゃダメだって言ってるわけじゃない

行くななんて言ったことないよな?

だけど最低限のルールが守れないなら、禁止してもいんだぞ?

嫌だろ?そんなの」




そう、ずっと家の中に縛り付けたっていいのだ。


それをしないのは俺の優しさであり、涼子への愛情だ。


ルールさえ守れば何も言うことなどないのに、涼子はいとも簡単にそれを裏切る。



「……ごめんなさい

今日みたいなことは二度としません」



口ではどうとでも言えるさ……


俺はゆっくりとソファーから立ち上がり、涼子の側まで歩み寄った。

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