浮気の定理-Answer-
長谷川の場合②
俺の記憶の中で、涼子が逆らったことはあまりない。
お仕置きに関しては、自分の非も認めているんだろう。
ごめんなさいと謝ることはあっても、言い訳することは少なかった。
俺が愛していると伝えれば、愛してると返しながら俺を受け入れる。
それがいつものパターンだ。
なのに今、目の前の涼子は、俺に屈しようとしない。
それどころか、強い眼差しで俺を見ている。
握り潰すような勢いで腕を掴んでも、腹に拳を沈めても、いつもの怯えた様子はなく、涙を滲ませながらも俺を睨んでるように見えた。
謝らない涼子に、俺の暴力は加速する。
それどころか、花をバザーに行かせてほしいと彼女は訴え続けていた。
ぐったりとした涼子を見て、俺はいつものように抱き抱えたまま愛してると囁く。
けれど彼女の口から愛してるという言葉を聞くことは最後までなかった。
イライラした。
バザーなどいつでもあるじゃないかと憤りを隠せなかった。
なかなか取れない有給を、わざわざ家族のために取ったのだ。