浮気の定理-Answer-
長谷川の場合③
「私は何をされてもかまわない!
でも、花に手をあげるのだけは許してください!」
いつもは物静かな涼子の、荒げた声がする。
俺はそれを苦々しい思いで見つめていた。
確かに頭にきた。
食卓を前にして思わず立ち上がったのも認めよう。
振り上げた手も威嚇するためのもの。
本気で花に手を出すつもりはなかった。
涼子にどけと言ったのも、きちんと話をするためだ。
バザーに行けなかったことをいつまでもぐずって、おまけに俺を嫌いだと言い放った花に、少しお灸をすえようと、そう思っただけ。
なのに涼子は、いつもの自分のお仕置きを、俺が花にするんじゃないかと本気で思ってるようだった。
そんな目で見るな!
これじゃまるで俺が悪者みたいじゃないか!
最近の涼子の態度は目に余るものがある。
お仕置きのあとは、しばらく彼女は大人しく俺のいう通りに生活するのが当たり前だったのに……
最近では、平気で俺に逆らってくる。
特に花が絡むと反抗さえしてくるのだ。