浮気の定理-Answer-
真由が痛みに顔を歪めたのとバーテンダーの諭すような声に、ハッとする。


仕方なくぼそぼそと謝りながら、急いで座り直した。


それでも自分の気持ちを伝えたくて、必死に今までのことを謝り、もう一度仲直りしようと説得する。


真由は無言だった。


聞いてるのか聞いてないのか、無表情で目の前のグラスを見つめていた。



「あれ?真由ちゃん」



その時だった。入口から入ってきたばかりの何人かいた客の一人が真由を呼んだ。


若くてスラリとした、いい男だ。


真由の顔が、パッと明るくなる。


嬉しそうに立ち上がると、その男を俺に紹介した。


さっき話した付き合ってる彼氏だと、彼の腕に自分の腕をからめながら……


そのあとのことはよく覚えていない。


本当に付き合ってるやつがいたなんて……


頭が真っ白になる。


目の前で並んで立つ二人は、確かにお似合いだ。


俺にはない若さ、俺にはない容姿、そしてなにより、真由の目が……俺を見るときの目とまったく違っていた。

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