浮気の定理-Answer-
俺に服従し続けてきた涼子の反抗は、脅威だった。


こうして俺を睨み付ける涼子など、見たくなかった。


ふいに訪れる焦燥感。


それが崩れることを俺は予想していなかったのだ。



『なんで言うことが聞けないの!』



突然、よぎる過去の記憶。


母親からのお仕置きに、反抗することなど許されなかった。


言うことを聞かなければ捨てられるかもしれない。


そんな恐怖といつも戦ってた。


殴られるままになってさえいれば、母は最後には安心する言葉をくれる。



『ごめんね?でも愛してるの』



良かった、やっぱりお母さんは僕を愛してくれてる。


嫌いだから殴るんじゃないんだ。


僕が悪いことをしたから、仕方なくなんだ。


抱き締められる感覚が嬉しくて温かくて、妙に安心したのを覚えてる。


だから、涼子にも同じように愛情を注いだ。


それを涼子もわかってくれてると思ってた。


でも花に対する涼子の愛情は、俺が母親に受けたものと全く違う。


それを見ているのが辛かった。


自分を否定されてるような気がしたから……

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