浮気の定理－Answer－
「なに言ってるの？本当に来てないのよ

勇さんは？心当たりないの？」




チッと相手にわからないように舌打ちをする。


シラをきるつもりだ。


涼子が行く場所など、実家しかないというのに……




「それは……涼子と花を帰すつもりはない

そうとってもいいんですね？」




低く冷たい声で、そう言い放った。


いつまでもいるいないを押し問答していたって時間の無駄だ。


涼子はこの電話の向こうに確実にいる。


そしてそれを隠すということは、母親は涼子や花を勇に帰すつもりはないということだ。




「何を言ってるのかわからないわ

もし涼子が来たら連絡しますから

勇さんも今夜はもう遅いし、休んだ方がいいわ？ね？」




首をコキッと鳴らしながら、スマホを持ち直す。


これ以上話していても無駄なんだと悟った瞬間だ。




「わかりました

お母さんがそのつもりなら、こちらにも考えがありますから」




それだけ言って、俺は電話を切った。


あの母親の言う通りにするつもりはなかったけれど、疲れが体を支配する。

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