浮気の定理-Answer-
俺を警戒している?


そこで初めてそう気づいた。


まさか……涼子は戻るつもりがないっていうのか?


消えたはずの不安が再び込み上げてくる。


心臓の音がうるさいくらいに鳴っているのがわかった。


運転してるのは、涼子の高校時代の友人で、あの毎月の定例会とやらでも一緒なはずだ。


母親だけでなく、友人にまで協力を頼んでいるという事実に、俺は焦りを感じた。


涼子を捕まえるのは難しいかもしれない。


自分の計画を軌道修正する。


けれど花さえ手に入れれば、涼子は戻ってくるに違いない。


花を乗せた車が走り去るのを見送ってから、ゆっくりと幼稚園に向かう。


あの友人が迎えに来る前に、俺が花を迎えにいけばいい。


父親が迎えに行くのだ。


幼稚園側も引き渡さないわけにはいかないだろう。


俺は幼稚園の側に車を停めて、その時を待った。


それから4時間後――


帰り支度を始めた園児達が見えたのを皮切りに、俺は車から降りた。


そのまま園の中へと入っていくと、真っ直ぐに花のクラスへと向かう。


担任らしき保育士が、不審者を見るような目で俺を見た。

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