浮気の定理-Answer-
それからピシャリと教室のドアを閉めて、園児達を庇うように立ちはだかる。




「あの、なにかご用でしょうか?」




心なしか、顔が強張っているように見えた。


父親が子供を迎えに来ただけだというのに、なにをそんなに警戒しているのだろう?


俺はにっこりと最上級の笑顔を作り、その保育士に目的を告げる。




「長谷川花を迎えに来ました

父親ですから安心してください」




保育士の目が揺らいだ。


20代だろうか?


まだ若く肌もピチピチしている。


幼い顔つきのくせに、自分の生徒を守ろうとする姿勢は微笑ましくもあった。




「ご家族の方からお父様が迎えに来るとは聞いてませんが……」




ピクリと眉が上がる。


父親が迎えに来てなにが悪いというのだろう?


面識がないからか?


ならば花に確認させればいいだろう?




「花を出してください

そうすれば父親かどうかわかるでしょう?」




険しい顔でそう言えば怯むと思ったのに、保育士の小娘は怯まなかった。




「お母様以外の方が迎えに来る場合は、連絡をいただくことになっております

電話で確認してもよろしいですか?」

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