浮気の定理-Answer-



それから1ヶ月が過ぎた頃――


仕事から帰ったばかりの部屋に一本の電話がかかってきた。


スマホではなく家の電話にかかってくる電話はろくな内容じゃないと知っている。


留守番電話が主がいないことを告げると、ピーッという発信音のあとに、懐かしい声が話し始めた。




『勇……お母さんだけど……

話したいことがあるの

この留守電を聞いたら連絡ください……』




なんだ?なぜこのタイミングで母が電話などしてくるんだろう?


大学進学したと同時に家を出た俺は、それから数えるほどしか母に会っていない。


最後に会ったのはいつだったろう?


あぁ、そうだ。花が産まれた時に、上京してきたのが最後だ。


それも涼子が退院してしばらく経った頃に知らせたのを覚えてる。


家には招き入れはしたが、泊まらせることはしなかった。


ここは俺の家で、涼子と花の三人だけの城だ。


だから母には近くのホテルを取ってやった。


涼子は家に泊まってもらってもいいのにと気遣うそぶりを見せたが、俺はそれを一蹴した。

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