浮気の定理-Answer-
いまさら母親ぶるなと言いたいのを我慢して、俺はそのまま切ろうとした。


そのとき、母が驚くべきことを口にしたのだ。




『涼子さんのこと、どうするつもりなの?

勇……もう解放してあげた方が……』




なんで……なんで母が涼子のことを知ってる?


まさか涼子が話したんだろうか?


俺を説得するように?


ふざけんな!


受話器を持つ手が怒りで震える。


それでも動揺してるなどと母に思われたくなくて、小さく息を吐いて平静を装った。




「母さんには関係のないことですよ?

どこから聞いたか知りませんが、気にしないでください」




『でも、勇……』




母が何か言いかけているのを無視して、俺は今度こそ電話を切った。


離婚届に母からの電話……


どうやら涼子は本気らしい。


この1ヶ月、何がいけなかったのかを考えた。


思い当たるのは花を叱ったあの日のことだけだ。


だけどあれは解決したはずじゃなかったのか?


プライドを捨ててまで何度も実家にも迎えに行ったというのに、涼子の顔さえ見せてもらえない始末だ。

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