浮気の定理-Answer-
だけどもし、それで真由が受け入れてくれなかったら?


妻を捨てて、真由にまで捨てられたら、俺はどうしていいのかわからない。


いまさら、この歳で一人で生きていくなど、無理に決まってる。


そんなリスクを負うくらいなら、真由を諦め、妻を選んだ方がいい。


よくよく考えてみれば、真由は俺の妻という器じゃないのだ。


愛してると思ったのは錯覚で、ただ彼女の体にのめり込んだだけ。


俺は必死にそう思い込もうとする。


そうでもしなければ、諦めきれなかったから……


グッと顔を上げ、大きく深呼吸をしてみる。


それから重い腕に力を入れて、おもむろに玄関に手をかけた。


「ただいま」


いつものような態度を心掛けながら、俺は奥から出てくるだろう妻に向かってそう言った。


お帰りなさい、そう言ってパタパタとスリッパを鳴らしながらいつものように出迎えてくれるはずだった。


それなのに、いつまでたっても妻の気配はない。


代わりに2階からパタパタと降りてきたのは、娘の智恵だった。
< 25 / 350 >

この作品をシェア

pagetop