浮気の定理-Answer-
心配した娘が妻を診療内科に連れていき、薬を処方されたほどだ。


事情を知った娘からは罵倒され、いい夫、いい父親だった俺の存在価値は地に落ちていた。


妻と真由を両天秤にかけてうまく釣り合っていることに快感を覚えていたあの頃の自分が滑稽だった。


真っ暗なままの部屋の中で、ドサリとソファーに体を預ける。


ネクタイを緩めながら目を閉じると、自然と深いため息が漏れた。


カチャッとリビングのドアが開く音がしてハッとする。


その瞬間目の前がパッと明るくなり、眩しくて目をパチパチさせていると、「おかえりなさい」と小さな声が聞こえた。



「あぁ、ただいま」



即座にそう返すとソファーから立ち上がり弱々しく立ち尽くしたままの妻の元へと歩み寄る。




「体調はどうだ?無理しないで寝てていんだぞ?」



顔色の悪い妻を気遣いそう声をかけると、彼女は小さく首を振って俺の腕をきゅっと掴んだ。

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