浮気の定理-Answer-
「寝てられないわ?だってあなた私がいなきゃなんにも出来ないじゃない。ご飯まだでしょ?今用意するから待っててね?そのあとはお風呂にしましょう」



無表情のままそう言うと、さっきまでの弱々しさはどこかにいってしまったかのように、キッチンへと向かう。


昨日までとは違う様子に、俺はゾッとした。


ここ最近、彼女は寝込んでばかりで、俺が帰ってきても起きてくることは無かった。


だから今日もいつものようにこの後はカップ麺でも食べてシャワーを浴びて、リビングのソファーで寝るつもりでいたのだ。


妻の顔をちゃんと見るのも、声を聞くのも、1週間ぶりのことだ。


年齢のわりに若々しかった面影はなくなり、一気に老け込んでしまった妻の後ろ姿を見ながら、俺は途方に暮れていた。


こんなはずじゃなかった。


妻をこんなふうにするつもりなど、毛頭なかったのに……
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