浮気の定理－Answer－
妻が先輩のところへ行ったのは、ただ単に俺と真由を別れさせたくて、自分のところに戻って欲しくてそう言ったんだと思ってた。


だけどそこには俺に対する気遣いも含まれていたんだとさっきの言葉から窺える。


きっと、先輩に話してくれた時も、声を荒らげることなく、冷静に伝えてくれたのかもしれない。


その証拠にさっき久しぶりに会った先輩は、俺のことよりも妻のことをとても心配していて、本当に申し訳ないことをしたと謝ってくれていた。


真由があんなことをしたのは全て自分のせいなんだと、だから許してほしいと。


妻が言うように、お酒を飲んで娘の結婚話を楽しく語っていたわけでは決してなく、ほとんどが謝罪であったことは、今さら言ったところで信じてもらえるはずもない。


それはあの時、自分が悪者になりたくなかったが故についた嘘が原因でもあり、どんな理由にせよ浮気をしてしまった自分自身の罪でもあるのだ。


先輩への気まずさと、妻への遠慮から、自分で解決する道から逃げたことが、きっと今に繋がってる。


あの時、どんなに罵倒されようが離婚されようが、嘘偽りなく自分のしたことを認めて謝っていれば、妻をこんな風にすることはなかったのかもしれない。

< 260 / 350 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop