浮気の定理-Answer-
「離婚は出来ましたが、慰謝料は取られました。この意味、あなたならわかるでしょう?」


ゴクリと唾を飲みこむ。


計画は失敗に終わった。この男は俺にそう言いたいのだ。


「そう……なんですか」


なんとも間抜けな返事をしながら、必死に頭を巡らす。


どう言い訳する?俺は俺を守るためにしたことだけれど、それが果たして通用するのか?


そんな俺の動揺を見抜いたかのように、男は少しだけ口角を上げて哀れむように俺を見た。


「わかってます。仕方なかったんですよね?あなたも脅されて話してしまった。違いますか?」


あなたもってことは、この男も脅されて慰謝料を払わざるを得なくなったんだろう。


いくら支払うのかなんて俺には関係の無いことだけど、そもそも普通に浮気を認めて別れたいと話し合えば、木下だって分かってくれたかもしれないのだ。


それなのに姑息な真似をしたばかりに、自分で自分の首を絞めてる。


自業自得だ。しかもそこに俺を巻き込んだのだから、俺も被害者なのかもしれない。


もともと木下にはとっくに振られているわけで、結婚した時点で諦めもついていた。


たまに一緒になる飲み会で隣に座るくらいで満足していた俺を、焚き付けたのはこいつだ。


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