浮気の定理-Answer-
木下のこと?なんで今さら……


嫌な予感が頭をよぎる。


まさかまさかまさか……


なにかバレたんだろうか?どこから?どうして?


疑問ばかりが脳内を埋めつくす。


そしてそれは次の言葉で現実となる。


「実は木下桃子さんのご主人から、うちに連絡があったんだよ」


口調は穏やかだけれど、メガネの奥の目は俺を確実に疑っている目だ。


木下桃子の旦那というフレーズを出して、俺がどう反応するのか見ているのかもしれない。


「心当たりはあるかな?君のことについていろいろ話されていたんだけど、あちらの言い分だけではこちらも判断出来ないってことで、君にも話を聞かせてもらおうと思ってね」


あいつが、なにを話したっていうんだろう?


自分のしたことを棚に上げて全部俺に罪をなすりつけようとしてるのかもしれない。


少し前に俺の前に姿を現したあいつは、確かに切羽詰まったようにも見えたけど、それでも会社になにかを訴えるなんて考えても見なかった。


こんなことなら、もう少し話をすべきだった。


金は返せないにしろ、もう少し穏やかにこちらも困っているんだと下手に出ていれば、こんな暴挙にでることはなかったのかもしれない。



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