浮気の定理-Answer-
最初から俺の話など聞く気は無いのだ。


ここに呼ばれた時点で黒だと思われている。


君の意見も聞いておこうと思ってだと?


そんなの形式的なもので、会社側の意向はすでに決まっているに違いない。


「……私は、やってません」


もう一度強い口調でそう伝えた。


こんなことで犯人に仕立て上げられるなんて、まっぴらごめんだ。


すると上司たちはそれぞれ目配せしながら、呆れたようにため息をつく。


それからおもむろに口を開いた。


「すまないがね?水落くん。君のことは調査済みなんだ。いろんな目撃証言も出ているし、会社としては君が自分から話してくれるのが一番いいと思っていたんだけど……」


目撃証言?何の話だ?あいつの話だけじゃなく、他にも俺を陥れようとしてる奴がいるってことなのか?


黙ったままの俺に、今度は顧問弁護士がさらに追い打ちをかける。


「君はストーカー行為をして彼女の弱みを握り、金を要求したと聞いている。そのことで先日会社の前で木下さんのご主人と口論になっているところを複数の人間が見てるんだよ。これは立派な恐喝になるんですよ?水落さん」


< 278 / 350 >

この作品をシェア

pagetop