浮気の定理-Answer-
それから俺は毎日注意深く彼女を見るようになった。


こないだまで全く彼女の変化に気づかなかったということは、安心しきっていたせいなのか、それとも彼女に関心がなかったからなのか……


でもそれを知るために彼女としっかり向き合わなきゃならないとわかっていても、怖かった。


もしかしたら彼女を本気で好きじゃなかったのかもしれないと思うことが。


三年も一緒にいて、喧嘩もしたことがない俺たちは、はたから見ればいい夫婦に見えていたと思う。


休みの日には一緒によく出かけていたし、子供がいなくてもそれなりに楽しくやっていたつもりだ。


彼女は不満を言うことなくいつも笑顔で、俺は少なからずそんな彼女に癒されていたのに……


あゆみは清水さんが辞めたあとしばらくしてからアルバイトとしてうちの店に入ってきたフリーターだった。


就活に失敗したという彼女は、普通のパートさんよりも長く働けることもあって、シフトに貢献してくれていたし、なによりよく働いた。


笑顔の可愛い看板娘が出来て、店長にも気に入られていたし、パートの人たちからも可愛がられていたと思う。


長く働いてくれているせいで俺とシフトで被る時間も多く、よく懐いてくれていた。


それから数ヶ月が経って、彼女から思いを打ち明けられた時、正直まだ清水さんとのことが癒えていなかったけれど、もう前に進もうという気持ちもあって受け入れたのだ。



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