浮気の定理-Answer-
「あぁ……そうだよ?なんでだ?」


少し上擦ったような声で、なんとかそう答える。


まさか……まさか……まさか……


真由に振られたこのタイミングで、妻にバレたっていうのか?


そんなの、洒落にもならない!


表面上は平静を装いながら、心の中では焦りが焦りを呼び、動揺しまくっていた。


妻は黙って、俺の顔色を窺うように見つめてくる。


やがて、俺から視線を外すと、あからさまに大きな溜め息をついた。


それからスッと席を立ち、棚からA4サイズの封筒を取り出すと、それを手に持って戻ってきた。


バサッと俺の前にその封筒を投げ捨て、仁王立ちになる。


「なんだ?これは……」


妻の勢いに押されて、声も情けないものになってしまった。


答えない妻の顔を見ることが出来なくて、封筒に視線を移す。


ゴクリと唾を呑み込んだ。


この封筒の中身は、たぶん俺にとって最悪なものに違いない。


見る前から、なんとなくそんな気がして、なかなかその封筒を手にすることが出来ないでいた。


「見て?」


上から見下ろすような格好で、妻は腕を組みながらそう言った。
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