浮気の定理-Answer-
「それで、あゆみちゃんはほら、はじめましてじゃない?お互い挨拶とかしてまあその時はそれで終わったんだけど」




--あゆみが?清水さんと会ったのか……




なんとなくソワソワするような気持ちになりながらも、あゆみからそんな話は聞かなかったなと不思議に思った。


あゆみは毎日、店でのことはわりとよく話す方だ。


菊池さんがこんなこと言ってただの、今日こんなお客さんが来てね?だの、たわいもない話だけれど、楽しそうに、時には口を尖らせながら話していたのを思い出す。




「あゆみちゃんからなにか聞いてない?」



「いえ、清水さんのことはなにも……」



「そう……てことはやっぱり気にしてるのかもしれないわね?」



菊池さんの意味深な言葉に心臓がドクンと大きく波打った。



--気にしてるってなにを?



俺と清水さんの関係を知る人なんかいないはずで、だからあゆみにそれがバレることだってないはずだ。


そうだと分かってはいても、頭に血が一気にのぼるのを感じた。



「……なにか、あったんですか?」



声がうわずりそうになるのを抑えながら、ゆっくりと静かなトーンで聞いてみる。




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