浮気の定理－Answer－
「清水さんが帰ったあと、他のみんながね？あゆみちゃんに余計なこと言っちゃったのよ」



余計なこと？余計なことってなんなんだ？



清水さんのことで、誰かが余計なことを言って、あゆみが気にすることなんて、一つしかない。


でも俺たちの関係は誰にも気づかれないまま終わったはずで、職場では菊池さんたちパートさんと変わらずに接していたはずだ。



なのに、なにをあゆみに言ったというんだろう？


何も言わないまま立ち尽くす俺を気の毒そうに見つめながら、菊池さんが話し始める。




「そういえば清水さんとあゆみちゃんて雰囲気似てるよね？って誰かが言い出して、それに乗っかるみたいにみんな、ほんとだ！似てる！って……」



俺の顔色を確かめるようにチラリと目線を向けた菊池さんは、申し訳なさそうに眉間にシワを寄せる。



「背の高い細身の美人さんでショートカットでしょ？確かにそう言われればそうかなぁとは思ったけど、あんなにいつも明るいあゆみちゃんの顔がどんどん曇っちゃって……」



清水さんとあゆみが、似てる？


考えたこともなかったけれど、そう言われてみればそうなのかもしれない。


だけどそれだけでそこまで気にするようなことだとは思えなかった。


たまたまタイプの似た二人だったってだけの話だ。


だいたい、俺自身はそんな風に考えたことなんか一度もない。
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