浮気の定理-Answer-
「極めつけは、飯島さん、清水さんとも仲良かったもんね?って……私も止めればよかったんだけど、まさかそこまで言うと思わなかったから……」




「ごめんなさいね?」と謝る菊池さん。




「それからあゆみちゃん様子がおかしくて、あんまり笑わなくなっちゃったの。仕事中はね?もちろん笑顔で接客してるんだけど、前みたいに心の底から笑ってる感じじゃなくて、営業スマイルみたいな……だから心配してたんだけど、その矢先にこれじゃない?それが原因だったら申し訳ないことしたなぁと思って」




そんなことがあったなんて、まったく知らなかった。


それだけじゃない。菊池さんでさえ気づいたあゆみの変化に、俺はまったく気づいていなかったのだ。


問題は清水さんがどうこうじゃなく、そこに気づかなかった俺自身にある。



きっとあゆみは感じ取ったのもしれない。



自分をきちんと見てくれていない夫のことを。



だから浮気に走ったんだろうか?



寂しさを埋めるために……



そうだとしたら、俺が彼女を非難する資格なんかない。



もしかしたら清水さんも、旦那さんのそんな態度が寂しくて俺とあんな風になったんだとしたら、子供がいるからではなく、きちんと向き合って旦那さんのそばにいることを選んだってこともあるのだ。
< 297 / 350 >

この作品をシェア

pagetop