浮気の定理-Answer-
年下の、明るくて社交的な可愛い妻。


そのどれにも当てはまらない妻が、今、ここに立ってる。


見たこともないような、怒りと悲しみと寂しさを湛えた表情で……


抗えない状況で、俺は仕方なく観念して、封筒の中身を取り出した。


「……っ!」


――嘘だろ!?


そこには、いつ撮ったものなのか、ホテルに入る真由と俺の姿が写っていた。


とっさに封筒の表面下にある文字を読んでみる。


そこには、五十嵐探偵事務所と、はっきりと書かれていた。


――いつからだ?智子はいつから気づいていたんだろう?


証拠は一切残さないように、しっかりと消していたはずだ。


メールも着信も全て消去していたし、アドレスだって怪しまれないように会社の名前にしていた。


クレジットカードも、履歴が残るから使わなかったし、真由との食事やホテル代だって、株で儲けた自分の小遣いで全て賄っていたのだ。


――何を見落とした?俺のアリバイは完璧だったはずなのに……


確かに最近は家庭を顧みず、真由のことばかり考えていたかもしれない。


でも、それが妻を不安にさせていたとは思っても見なかった。
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