浮気の定理－Answer－
桃子に慰謝料を払い、引越しができなくなったことを伝えると、紗英はあからさまに嫌悪に満ちた目で俺を見た。



「奥さんも浮気してたんじゃなかったの？だから慰謝料は払わなくていいって言ってたよね？」



もちろん、紗英に俺が桃子にしたことを話したわけじゃない。


ただ、向こうも浮気しているみたいだから、慰謝料は払わなくていいのだと、だからこれからの生活は大丈夫だからと、それだけを伝えていた。


紗英は子供が生まれる頃には新居に移り、新しい家具や家電に囲まれて、3人で暮らせるのだと思っていたのだ。


それだけに、このまましばらく紗英の狭いワンルームで生活しなければならないことを知った時は、落胆も大きかったに違いない。


その気持ちはよくわかる。


俺自身だって残念でならないのだ。


あと少しで計画は成功し、紗英と子供と3人の新しい生活が出来ると思っていたのに……


なんとかしなければと俺は必死だった。


取れるところからどんな手を使っても金を工面しなければ、３人で暮らすどころか共倒れになる。


店を手放して体だけどこかで雇ってもらえればなんとかなるかもしれないと思ったけれど、それは紗英が許さなかった。
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