浮気の定理－Answer－
働こうにも店は人手が足りず、開けることが出来ない。



手放そうにも紗英の反対がそれを不可能にしていた。



だから卑怯な手を使ってでも金の工面をしたって言うのに、なぜそれをわかってくれないんだろう？



「わかってるよ、でも産まれてくる子のためにもまずは引っ越してそれからそのあとの事は考えればいいだろう？」



イライラしながらそう答えると、紗英は目を見開いて、さっきよりもさらにヒステリックになる。



「引っ越して家賃が払えなかったら？光熱費が払えなかったら？生まれてきた子のミルクが買えなかったら？今、そういうこと全部考えないでいつ考えるのよ！雅人さん、危機感なさすぎる！後で考えればいいだろう？って、能天気にもほどがあるでしょ？」



もっともな言い分になにも言えなくなる。


それでも俺だって必死になんとかしようとしてることをわかって欲しかった。



「やっぱり店を手放すよ……そうすれば店の家賃もなくなるし、体だけ雇ってもらえれば必要経費がない分、楽になるだろうから……また金を貯めていつか店を持てればいいし、今は紗英と子供と三人でどう暮らしていくかだけ考えたい」




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