浮気の定理-Answer-
不安は疑惑に変わり、今まで以上に、俺を見るようになったのかもしれない。


安心して俺を信頼していれば、けして気付かなかったかもしれない態度の変化を、微妙に感じ取ったんだとしたら?


きっと皮肉にも妻が浮気に気づいたのは、真由と上手くいかなくなってからなんだろう。


それまでの俺は完璧なまでに真由も妻も愛せていたと思うから……


余裕がなくなった時、釣り合っていた天秤が傾いたのだ。


間違いなく真由の方に……


「どこの……お嬢さんなの?」


妻の声は震えていた。


俺は真由を失ったその日に妻まで失うのか?


そう思ったら、恐かった。


さっきまで、妻を捨てて真由の元に行こうとしていた自分とは思えないほど、動揺する。


一番、危惧していたことが現実になりそうな予感に、目の前が真っ暗になった。


「自分の娘と……同じくらいのお嬢さんと……恥ずかしくないの!」


静かだった口調は怒声に変わる。


俺は、何も言えなかった。


疑惑ではない核心部分をつきつけられて、いまさらどう言い訳すればいいというのか?
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