浮気の定理－Answer－
「突然ごめんなさい、たまたまお店の前を通ったら貸店舗になってたから気になって……もしかして私に払ってくれた慰謝料のせい？あのとき詳しい理由教えてくれなかったけど、無理したんじゃないの？」



あぁ……そうか。


あの女、吉岡真由は本当のことを桃子には話していないんだとこの時はっきりとわかった。


だから、自分が俺を脅したことも口止めして、俺の意思で慰謝料を払うと伝えろと言ったのだ。


本当に桃子のことが大切で、これ以上傷つけたくなかったんだとわかる。


それだけに俺への憎しみも人1倍強かったんだろう。



「もし、ほんとにそのせいならお金返そうかと思って……もともと悪いのは私なんだし、離婚するって決めた時もそういう約束だったんだし」



どこまでお人好しなんだろう？


俺がしたことを知ったら、同じ口でどんな言葉を俺にかけるのか……


金は正直、喉から手が出るほど欲しい。


でも、無理やりだったとしても、心のどこかで慰謝料を払ったことで桃子への罪悪感が少し減ったような気がしていたのも本当だった。


紗英と上手くいっていたらこんな風に思わなかったかもしれない。


けれどそれがきっかけで紗英と上手くいかなくなったのも現実だった。
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