浮気の定理-Answer-
「なんとか言ってよ!」


押し黙る俺にしびれを切らして、妻はさらに問い詰める。


俺は肯定も否定も出来ないまま、ただじっと目の前の写真を見つめていた。


「……どうするつもり?ただの……浮気?
それとも……私と別れて、その子と一緒になるの?」


たった今、振られたんだと言ったら、妻は許してくれるだろうか?


真由とは終わったんだと……


虫のいい話かもしれないけれど、俺は妻と離婚する気はもうなかった。


このまま許してくれるなら、二度と浮気なんかするまいと、誓うことさえ出来る。


「……お前と別れるつもりはない」


妻の顔が微妙に変化した。


怒りは残っているものの、ホッとしたような安堵した顔。


「この子とは別れるつもりだったんだ」


「つもり?」


「やっぱりお前が大切だって気づいたんだよ

それで何度も別れを切り出しているんだけど、なかなか別れてくれなくて……」


我ながら、よくそんな嘘がつけるもんだと心の中で苦笑した。


だけど、今、妻と別れずに済むんだとしたら、真由を悪者にするしかない。
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