浮気の定理-Answer-
玄関のドアを勢いよく叩きながらそう叫ぶと、警察官が二人がかりで俺を取り押さえた。



「やめなさい!現行犯で逮捕することもできるんだぞ?」



現行犯?現行犯てなんだ?



「待ってください!俺は何もしてない!ここの娘に聞いてくれればわかるから!ただ会いに来ただけなんですよ、おまわりさん!」



暴れる俺を取り押さえながら、警官の一人が俺に手錠をかけた。



「こちらのお宅から通報があったんだよ、娘のストーカーが家の前に来てるって。ストーカー行為の現行犯だ。署まで来てもらう」




ストーカー?ストーカーって何のことだ?


なんで通報なんて……


そこで初めてさっきの母親の返事に間があったことを思い出した。


あれはきっと警察に連絡していたのかもしれない。


待ってろと言ったのは、この警察官が到着するのを見越してわざとそう言ったのだ。


呆然とその場に立ち尽くす俺を、二人がかりでパトカーの方へと引っ張っていく。


紗英が俺を騙していたことに、ようやくそこで気づいた。


せっかく仕事も決まったのに……


紗英のために、子供のために、全てを犠牲にして頑張ってきたのに……




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