浮気の定理-Answer-
警察で事情聴取されて、ありのままを話したけれど、なに一つ信じてはもらえなかった。


なぜ信じてもらえないのか?


その理由を聞かされて、愕然とする。


紗英には別の夫がいて、子供もその男との間に出来たのだと、証言していると……


以前からバイト先でセクハラされており、辞めたあともしつこく付きまとわれてストーカー行為がエスカレートしているため何とかしてほしいと通報があったと聞かされた。


金を渡したことなど、何一つなかったことになってる。


信じられなかった。


あのまま桃子に慰謝料を払わなかったとしても、同じ結果だったのかもしれない。


金だけを持ち逃げされて、挙げ句にストーカーに仕立てあげられることは、紗英の計画だったのだ。


桃子を陥れて手に入れようとしたものは、結局なにひとつ手に入らなかった。


それどころか、今では立派な犯罪者だ。


後ろめたいことをしてきた俺を信用してくれる者など誰一人いるわけもない。


ふいに笑いがこみ上げる。


次第に大きくなっていく笑い声に警官がぎょっとした顔で俺を見た。


けたたましく小さな部屋に響く笑い声。


それが自分のものだとわかってはいても止めることが出来なかった。


人が壊れていくってこういうことなんだと、どこか他人事のように感じながら、俺は涙を流して笑い続けていた。





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